医療費控除のすべてがわかる本・税理士のための確定申告

医療費控除、住宅ローン控除、ふるさと納税(寄付金控除)

確定申告で、多くの人が知っている控除トップ3といえば、この3つかと思います。そのなかでも特に申告件数が多い医療費控除はどのくらい税金が少なくなるかご存じですか?

目次

年収500万円の会社員は医療費控除でいくら節税になる?

ここでは、年収500万円の会社員の方が、昨年医療費を20万円支払っていたとしましょう。結論からいうと、この場合医療費控除によって約1万円税金が戻ってきます。

簡単に医療費控除の解説をします。

医療費控除の計算方法

医療費控除は、年間のお給料などの所得から「医療費控除額」をマイナスすることで税金がかかる所得を少なくする仕組みになっています。ここで出てきた「医療費控除額」とは“1年間に支払った医療費(=病院代や薬代)から10万円を差し引いた金額”のことです。

医療費控除がない場合と、ある場合では式にするとこんなイメージです。

  • 医療費控除がない場合
     1年間の所得 × 所得税率 = 払う税金
  • 医療費控除がある場合
    (1年間の所得 - 医療費控除額)× 所得税率 = 控除後の払う税金

税金がかかる「1年間の所得」を少なくできるので払う税金が減るのです。

ここで、注意しないといけないのは「支払った医療費の金額だけ税金が減るのではない。」ということです。

例えば、
・年収300万円(この場合の“1年間の所得”は約200万円になります)、医療費控除額を20万円、所得税率を5%とすると

  • 医療費控除がない場合
    200万円 × 5% = 10万円(払う税金)
  • 医療費控除がある場合
    (200万円 - 20万円)×5% = 9万円(控除後の払う税金)

このようになります。医療費控除額20万円に対して税金は1万円しか減っていませんよね。「医療費控除額 × 所得税率」の分だけ税金が少なくなる仕組みなのです。そのため医療費控除は税率が高い人(=年収が高い人)のほうが多く税金が戻ってきやすい仕組みになっています。

あくまで目安ですが副業などのない会社員の方は医療費控除によりおおよそこのくらい税金が戻ってきます。

医療費控除による還付金の目安(所得税)

支払った医療費  15万円 20万円 25万円 30万円
 年収400万円 2,500円 5,000円 7,500円 10,000円
 年収500万円 5,000円 10,000円 15,000円 20,000円
 年収700万円 10,000円 20,000円 30,000円 40,000円
年収1,000万円 10,000円 20,000円 30,000円 40,000円

また、この表は所得税の還付額の目安ですが、これとは別に控除額に応じて住民税も安く済みます。住民税が減る目安額は「医療費控除額の約10%」です。

例えば「年収500万円、1年間に支払った医療費30万円(=医療費控除額:30万円ー10万円=20万円)」の会社員の場合、所得税が1万円戻ってきて住民税は2万円(20万円×10%)安くなるので、確定申告で医療費控除の手続きをすることで合計3万円分の節税になりますね。

補足とまとめ

いまの時期、医療費控除の対象についてお問い合わせを多く頂きます。

なかでも「知らなかったー!」と驚いて頂くことが多いのは「保険外診療でも治療のためのものであれば医療費控除の対象にしてOK」ということ。

注)「保険外診療」は健康保険が適用されず医療費を全額(10割)負担しなくてはならない診療のことです

先日もお伝えしましたが治療目的の保険外診療でよくあるものは、
・歯のインプラント
・目のレーシック
・不妊治療
などです。

これらは高額になりやすい治療ですので控除額も多くなります。医療費の領収書を一年分集めるのは少し大変かもしれませんが、医療費を多く支払っている方の負担を軽減するための制度ですので、控除を受けて戻ってきたお金でおいしいものを食べに行きましょう。

おすすめは家の中に小箱やファイルを置いておき、病院や薬局から帰ってきたら領収書をそこに入れることを習慣にすると領収書を集める負担も減りますよ。

医療費控除についてはこちらの記事も参考にしてください。

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