〔2018年5月2日 更新〕
国税庁のホームページ(URL)変更に対応し、各書類のリンクを更新致しました。

こんにちは。税理士の比留間です。

週末は暖かったので昭和記念公園で開催されていた餃子フェスに行ってきました。6種類の餃子を食べましたが、どれも特徴があり美味しくいただきました。帰りに11月にルミネ立川の1階にオープンした「生クリーム専門店ミルク」で生クリームシュークリームを食べてみよう。と妻と話していたのですが、オープンから変わらずの人気で行列だったため今回は泣く泣く諦めました。来月こそはリベンジしたいと思います。

今日は、個人事業主(フリーランス)として開業したときに最低限提出する必要がある書類についてです。

目次

1.個人事業の開業届出書

正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。
個人事業を開業または廃業するときに提出します。

この届出書を提出することで、税務署があなたの事業の開業があったことを知り、税金に関するお知らせや申告書などの書類が住所または事務所(=納税地※1)に送られてくるようになります。

提出先 納税地を管轄している税務署(※2)
提出期限 開業日から1か月以内
添付書類 なし
書式 個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)〔PDF〕書き方〔PDF〕

※1
納税地とは、税金を納める場所のことです。個人事業主は原則は「納税地=住んでいる場所」ですが、住まいとは別に事業用の事務所を借りている場合は、その事務所の場所を納税地に選択できます。
事務所を納税地にする場合には、住んでいる場所を管轄している税務署に「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書〔PDF〕」を提出する必要があります。(お住まいが立川市、昭島市、国分寺市、国立市、東大和市、武蔵村山市の場合は「立川税務署」が管轄です。)

※2
税務署以外にも、都税事務所へ「事業開始等申告書(個人事業税)〔PDF〕」の提出が必要です。

2.所得税の青色申告承認申請書

所得税の確定申告を「青色申告」で行うために必要な届出書です。

①この届出書を提出し
②簡易簿記により帳簿を作成し
③請求書や領収書、帳簿などの資料を保管すると
不動産や事業で稼いだ利益から10万円分の控除を受けられます。(=利益を10万円少なく申告できるので、所得税や住民税の支払額が少なくできます。)

さらに、②を簡易簿記ではなく「複式簿記」という方法で帳簿を作成すると控除額が10万円ではなく65万円に増えます。(=控除額が大きく増えるので、所得税・住民税も大きく節税できます。)

この申請書を提出しないと「青色申告」ではなく白色申告という方法で確定申告をすることになります。白色申告では10万円や65万円の控除を受けられなかったり、赤字の繰越しや家族への給料を経費にすることに制限があります。にもかかわらず、現在は白色申告でも帳簿の作成や保存義務があり、青色申告とほとんど変わらないため事業を開始する方は必ず提出しましょう。

なお、青色申告承認申請書を提出しても白色申告を選択することはできますが、逆(=申請書を提出しないで青色申告を選択すること)はできませんのでその意味でも必ず提出しておいたほうが良いですね。

青色申告の特典には、次のものがあります。

青色申告の特典

  • 帳簿の作成方法により簡易簿記で10万円、複式簿記で65万円を利益から控除し節税できる。
  • 事業が赤字になった場合、赤字のマイナス金額を3年間繰り越して黒字になった年の利益と相殺できる。
  • 家族への給料を全額経費にできる。
    ⇒ 青色申告でない場合は家族への給料は最大86万円が限度になってしまいます。
  • 30万円未満の固定資産を買った場合、全額その年の経費にできる。
    ⇒ 青色申告でない場合は10万円未満の固定資産しか全額経費にできません。
  • 自宅家賃などの家事関連費のうち事業用に使用している割合を経費にできる。
    ⇒ 青色申告でない場合は業務用として50%超使用している費用しか経費にできません。
    家事関連費の例:家賃、光熱費、電話・インターネット料金、ガソリン代、保険料など。
提出先 納税地を管轄している税務署
提出期限 開業日から2ヵ月以内
添付書類 なし
書式 所得税の青色申告承認申請書〔PDF〕

3.給与支払事務所等の開設届出書

正式名称は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」です。
従業員(家族従業員も含む)を雇うことになったときに提出します。

届出書の提出によって従業員の給与から天引きする源泉所得税関係の書類が税務署から送られてきます。

提出先 給与支払事務所等の所在地を管轄している税務署
提出期限 事務所の開設日から1ヵ月以内
添付書類 なし
書式 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書〔PDF〕

4.源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

給与から天引きした源泉所得税の税務署への支払いを「毎月」ではなく「半年に一度」に変更するための申請書です。

半年に一度の支払いでよくなるため毎月支払いよりも納付手続きの事務負担を減らすことができます。なお、半年分(6ヵ月分)をまとめて支払うので1年間の合計支払額は同じです。

注意点は、この申請書は従業員が「10人以上」の場合には提出できません。

提出先 給与支払事務所等の所在地を管轄している税務署
提出期限 なし(提出日の翌月に支払う給料から適用されます)
添付書類 なし
書式 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書〔PDF〕

5.青色事業専従者給与に関する届出書

青色申告の特典の「家族への給料を全額経費にする」ための届出書です。

届出書名のとおり
・2.の青色申告承認申請書を提出していて
・主にその事業で働いている家族従業員に
・支払った給料
を経費にできますが、具体的に青色事業専従者(=支払った給料を経費として認められる家族)は下記の1.~3のすべてを満たす人に限られます。

  1. 事業主と生計を共にしている家族(夫や妻、親族)であること。
  2. 申告対象年の年末現在で15歳以上であること。
  3. 申告対象年の12ヵ月のうち6ヵ月超、事業主の事業に従事していること。

また、支払う給料についても注意点があります。

  1. 給料額が「届出書に記載した方法」と「記載した金額の範囲内」であること。
  2. 給料額が働いた対価に相応しいと認められること。(短時間しか働いていないのに家族だからという理由だけで高額な給料を支払っている場合などは経費として認められません)

もう一つこの制度の注意点は、青色事業専従者にした家族は年収が103万円以下であっても、その家族の分の「配偶者控除」や「扶養控除」は受けられなくなってしまうことです。事業の利益金額によってはこの制度を使わないほうが節税になることもありますのでシミュレーションを行うことが必要です。

給料の金額によっては、源泉泉所得税や住民税支払い手続きなどの事務負担も必要ですのでお気をつけください。

提出先 納税地を管轄している税務署
提出期限 開業日から2ヵ月以内
添付書類 届出書の記載内容とは別に給与規程があるときは、その給与規定の写し
書式 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書〔PDF〕

その他の届出書

必ず届出が必要な書類ではありませんが「事業内容に適した会計方法の選択」や「節税」などのために下記の書類を提出したほうが良い場合があります。

こちらの書類は、より専門的な内容で事業の見通しにより提出する・提出しないを判断することが大切です。特に開業時に大きな設備投資が必要になる事業ですと、消費税の届出書の提出有無によって数十万円(内容によっては数百万円)も税金負担額が変わってきますので、事前に専門家にご相談を頂いたほうがよいですね。

まとめ

開業時に提出すべき税務関係書類は、1.~5.を提出しておくと大きな間違いはありません。

開業時は、事業内容により営業に必要となる許認可関係の書類や当面の事業資金のための融資・補助金に関する書類の作成・提出が最優先になりやすく税金関係の書類の提出が遅れてしまいやすいです。

ただ、税金関係の書類は期限が設定されている書類が多く、当事務所へご相談を頂くお客さまの中にももう少し早めにご相談を頂ければ税金を節約できたのに…ということもございます。

ご自身で提出される場合には早めに提出できるよう心掛けて頂き、税理士に任せる場合にも早め早めに連絡をすることで適切な届出書類の検討・作成ができるかと思います。