飲食店の「OPEN」看板の写真

飲食店は、個人事業での開業をおすすめいたします。

目次

飲食店を個人事業で開業するメリット

会社設立費用が不要

会社設立には登録免許税などの費用(株式会社で24万円以上、合同会社で6万円以上)がかかります。飲食店開業時は、店舗費用・採用費用などたくさんの出費がありますので、そちらを優先しましょう。

社会保険(年金・健康保険)に加入しなくてよい

法人は社会保険に強制加入ですが、個人事業̟̟+飲食業なら任意加入のため、加入する・しないを選べます。社会保険料は従業員が増えるほど支払額が増えて資金繰りを悪化させますので、加入しなくてよい個人事業は大きなメリットでしょう。

ちなみに、雇用保険・労災保険は法人も個人事業も従業員を雇うと必ず加入しなければいけません。

消費税の免税期間をフルに使える

消費税の仕組みとして、最大2年間の免税期間があります。会社を設立し法人としてスタートすると免税期間は最大2年間だけですが、個人事業として開業して2年間営業した後に、会社設立すると、法人としても2期分の免税期間があるので、合わせて最大4年間消費税の納税額を0円にすることができます。(売上高や給料の支払い状況、法人成り時の資本金によっては免税期間がそれぞれ1年間になる場合があります。)

専門家費用を節約できる

一般的に会社設立の費用は、登記等の手続き代行費用として司法書士に6万円~8万円、社会保険の手続き代行費用としてで社会保険労務士に3万円~5万円、経理や確定申告の費用として税理士に10万円~20万円の報酬支払いが必要です。

経理については、法人でも日々の「会計処理」は、簿記の勉強をしたことがあるスタッフがいれば自社内で対応できます。一方で、法人税の確定申告は、難易度が高いため会計事務所出身者のような経験者がいない限り税理士へ依頼することが多いでしょう。

なお、個人の所得税の確定申告は法人税の申告よりも難易度が下がるため安い料金で依頼できますし、時間が取れれば税理士に依頼せずにご自身で対応するという判断もできます。(その場合は、地域の青色申告会や税務署・税理会主催の無料相談会を活用することが大切です。)

飲食店を個人事業で開業するデメリット

家族への給料が経費にならない

法人であれば、家族への給料は全額経費にできます。しかし個人事業では、家族がホールスタッフや経理作業者としてお店を手伝っていても、その家族が他にもパートなどをしていると、家族への給料は原則経費になりません。(「青色専従者給与に関する届出書」を提出して一定の要件を満たさないと家族への給料は経費できません。)

共同経営の場合、不平等になりやすい

法人では、各経営者が出資した金額は定款(←設立時に会社のルールを記載する書類。)にしっかりと記載されます。利益も役員報酬として分配するため共同経営者同士で平等な取扱いができます。

しかし個人事業では、法律上どちらか一方の開業とみなされて、利益や税金の計算がされるため経営者同士で平等な分配は難しいです。また、テナントの賃貸借契約や厨房設備のリース契約も個人名義となるため、将来名義人となった一方の経営者が退職することになると契約者変更が必要となり、場合によっては契約を継続できなくなるリスクがあります。

商売上の信用は法人よりも低くなりやすい

大型の契約(大企業への宴会場の提供や弁当納品など)やスタッフの募集では一般的に法人のほうが信用度が高いため、個人事業では不利になる場合があります。

なお、信用度という観点から「創業融資も法人のほうが借りやすいのでは?」と心配する方もいますが、日本政策金融公庫の融資では審査上、個人事業と法人でどちらが有利ということはありません。

まとめ

飲食店の開業には、ヒト・モノ・テンポの全てを揃える必要があります。法人による開業は、開業前も開業後も費用や手間がかかりますので、共同経営での開業や大企業との取引が決まっている場合などを除き、「費用」「税金」「社会保険」の面から個人事業での開業を強くおすすめします。

なお、開店後すぐに売上が伸びる見込みがあり節税対策に重点を置きたい場合や早期多店舗化を計画している場合、一流ホテルのシェフなど優秀な人材の確保が重要な業態の場合には、法人として開業するほうがよい場合もありますのでご相談ください。

飲食店の開業についてはこちらの記事もご参考にしてください。

飲食店の開業資金は銀行で借りる?日本政策金融公庫で借りる?